九十歳。何がめでたい
佐藤愛子著(小学館・1200円+税)

著者は大正12年11月生まれだから、93歳になる。「女性セブン」に連載したエッセー28編をまとめた作品だ。「ヤケクソが籠っている」ということだが、このタイトルが何ともいい。「連載が始まってから気が付くと、錆びついた脳細胞はいくらか動き始め、私は老人性ウツ病から抜け出ていた」と記す。私も高齢者の仲間入りをしているので、いくつになっても「のんびりしよう」と考えてはダメだ、と教えられた。

「来るか?日本人総アホ時代」に、こう書かれている。「そんなもの(※スマホのこと)が行き渡ると、人間はみなバカになるわ。調べたり考えたり記憶したり、努力をしなくてもすぐ答えが出てくるんだもの。まったく日本人総アホの時代が来るね!」「もっと便利に、もっと早く、もっと長く、もっときれいに、もっとおいしいものを、もっともっともっと…。もう『進歩』はこのへんでいい。更に文明を進歩させる必要はない。進歩が必要だとしたら、それは人間の精神力である。私はそう思う」

いやー、痛快である。まず、テンポがいい。棘もあるが、奥歯に挟まったような言い方はしない。ズバッと言い切る。読み終わってスッキリしたというのが実感である。「ちゃんとした大人に叱ってほしい」と思う人が、世の中には結構多いのかもしれない、とも思った。

「年寄の繰り言」と思う人もいるかもしれない。だが、著者の人生を知ると、納得できるような気がするのだ。夫の借金を抱えて悪戦苦闘していた様を描いた「戦いすんで日が暮れて」で直木賞を受賞する。45歳の時だった。肝がすわっているのである。そして、90歳を超えているのだから、何を言ってもご拝聴しようという気持ちになる。

少し大きめの文字で、読みやすい。気がついたら読み終わっていたという感じだ。もう少し、著者のエッセーを読みたいと思ったのは私だけでないだろう。100万部を超えるベストセラーになっているのも納得できる。

【ジャーナリスト 枡田勲 2017/12/14】